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NOVEL

れんげはちみつ

10,521 文字/5p

 

mochi/Chewy

18-14または、19-15のイメージです。 「デートで私を満足させることが出来たら、その時はオマエと付き合う」そういう約束で、沖神が勝負と言う名のデートをします。 女にモテることには慣れているけど、口説くとなるとからっきし…な、じゃがいも隊長と、天使性大爆発の神楽ちゃんのお話です。 少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。


注意事項:

・原作程度の近妙表現がほんの少しあります。

・モブキャラが出ます。

・素敵な表紙をお借りしました。

https://www.pixiv.net/artworks/72561434

れんげはちみつ

 赤子の頬を思わせる柔らかな餅の中に、この店自慢の絶妙な黒餡と、糖度の高いブランド苺が包み込まれている。餅の向こう側にうっすらと透ける苺の赤色がどうしようもなく食欲をそそる。

 季節限定のスペシャルいちご大福は、1個280円と割高で神楽には手が出せない。苺に負けず劣らずの赤い服を着た神楽が大福屋のショーケースに張り付いていると、そこへ絶賛サボり中の沖田が通りかかった。

 

「すいやせーん。この苺大福、あるだけ全部くだせぇ」

「な?!」

「あり?チャイナ、いたの?」

 

 片方の口角を上げ、神楽に悪魔の笑みを向ける沖田に、神楽は一瞬で沸騰する。

 

「寄越せぇぇええ!!私の苺大福ぅうう!!」

 

 神楽が苺大福を奪おうと伸ばした右手を沖田がひょいと躱し、負けじと伸ばした神楽の左手をまた沖田が避ける。このやり取りが常人の目には見えない速度で数十回繰り広げられた後、神楽が苺大福の殆どを奪い取り、茶屋の長椅子に腰掛けた。神楽の横に人一人分の距離を開け、沖田も腰掛ける。そこへふっくらとしたこの店の看板女将がお茶を運んできた。

 

「お嬢さん、優しい彼氏がいて良かったねぇ。ずっと食べたそうにしてたもんねぇ」

「ゴフッ……?!」

 

 神楽は大量に頬ばっていた苺大福を喉に詰まらせ、拳で自分の胸元をゴンゴンと叩いた。みずみずしい苺と餡のハーモニーを充分味わう前に、貴重な苺大福が消化管へ押し込まれていく。

 

「冗談はよしてくだせぇよ。誰がこんなゴリラ女」

「あら、てっきり恋人同士かと思ったわぁ!!だって、あなたが買ったものなのに彼女にこんなに譲ってあげてるじゃない」

 

 女将が指さした先には、苺大福が山積みになった神楽の皿と、苺大福が2つだけ載っている沖田の皿。神楽は湯呑みの茶を一気に飲み干した後、心底嫌そうな顔を女将に向けた。

 

「やめてヨ女将。これは実力差で勝ち取った戦利品ネ。こいつがそんな優しいわけないダロ?こんなクソドSの彼女なんてキンピラごめんアル!!」

「まっぴらだろうが。こんな馬鹿女なんざこっちだって御免こうむるぜ」

「誰が馬鹿アルカぁあ?!」

 

 神楽が沖田に拳を繰り出すと、沖田は右手の掌でしっかりと受け止めた。

 

「喧嘩ばっかりしてないで一回デートでもしてみればいいのよ?!ほら、こうして手を繋いでね」

 

 沖田の手に包まれた神楽の拳を女将が指差すと、沖田と神楽の背中に鳥肌が駆け巡り、双方素早く手を離した。

 

「女将、こいつは女の子の首に首輪をつけて鎖引いて歩く男アルヨ?しかもランチに猫の餌を食わせるネ。こんな最低男とのデートなんか楽しいわけがないアル」

「知らねぇよ。名前も覚えちゃいねぇが、向こうが勝手に寄ってきて勝手にMに目覚めるだけでィ。望み通りにしてやってるだけだ、紳士と呼んで欲しいぜ。大体、俺が本気だして女口説こうと思やァ、ぐうの音も出ねぇほど良い時間をプロデュースできらァ」

「はっはっは!笑わせんじゃねーアル!!」

「てめぇみてぇな女がデートの後にゃ帰りたくねぇって泣きついて〇〇してくれ〇〇〇してくれって〇を〇いて来るんだろうぜ」

「んなこと絶対しないアル…」

「どうだかなァ」

「絶っっ対ないアル!!」

「へぇへぇ」

「?!じゃあ勝負ネ!!オマエがエスコートするデートで、私を存分に満足させることができたら、その時はオマエの彼女になってやってもいいアル!!」

「ハッ。俺には『 彼女にしてくださいご主人様』つって土下座するてめぇが見えるぜ」

「んだとごらァ?!そこまで言うなら今度の日曜日、私を満足させてみろヨ!お前の言う通りには絶っっっっ対ならないアル!!」

「望むところでィ。土下座しやすい服来て来いや」

 

 売り言葉に買い言葉。かくして、二人は勝負という名の元にデートをすることになったのであった。

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