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NOVEL

POPPING CANDY BOMB 

14,943 文字/1p

 

ししまるこ/ししまる粉ブレッド

ひょんなことから近場に二人っきりでお泊りに行くことになった、両片思い2016沖神。


注意事項:土方さんが前半ちょっと出張ります。

途中、土←沖と勘違いされる描写がありますが完全なる誤解であり沖神です。  

「「「「は?」」」」

 

爆弾とは、爆発を利用して攻撃する兵器の事である。例えばバズーカの弾だったり、後は空から落とされるものであったり。

 

(だからまさか、こんなクソアマの口から爆弾が出るなんてなァ。ああ、そうか、だから『爆弾発言』って言うのか)

 

そんな事をぼんやり思っていた。多分それはただの現実逃避。

爆心地のそこはシンと静まり返り、保護者の視線が呆けた男に一斉に突き刺さる。

 

珍しく男は混乱していた。得意のポーカーフェイスを崩すのはいつもこの彼女だけだ。

 

ただ一人、爆弾を落とした張本人だけが少し寂しそうにして立っていた。

 

 * * *

 

その日も特に執着がある訳でもないベンチの所有権を巡って、沖田総悟と神楽は得物を交えていた。

 

「五月晴れのいいお天気ね」と、話していたご婦人達や、鬼ごっこをしていた子供達は早々に避難している。

 

ガッと番傘が地面に刺さると同時に、ザンッと刀も地面に突き刺さった。

 

今日も引き分けだ。

神楽は広げた番傘を正しく持ち、沖田は刀を鞘に納めた。無言でそこかしこについてしまった砂埃を払う。

それから神楽は勝手に帰ることなく、番傘をクルクルと回して沖田がベンチに掛けた隊服のジャケットを取りに行くのを待っていた。沖田もそれを肩に掛けて、神楽の側へと戻ってくる。

 

「じゃあ行こうヨ」

「おう」

 

そう言い合う二人は、先ほどまで眼をギラつかせていたとはとても思えない。そして他愛も無い話をしながら、仲良く横に並んで公園を後にした。


 

最近出来た二人のルールがある。

それは喧嘩の際に、買った方が負けた方に駄菓子屋でお菓子を奢るというもの。しかしいつの間にか、引き分けの場合も神楽が勝ったとみなされるようになった。

 

「今日は何にしようかナ~」

「俺はパチパチ」

「むぉ!何それ?新八の仲間アルか?眼鏡アルか?」

神楽は沖田の二の腕を掴みながら顔を覗き込んだ。距離が近いのは昔から。それがいがみ合っていないだけ。

「残念ながらパチしか掠ってねーわ。すげぇぞ、あれ。飴を装った爆弾が口の中で破裂するんでィ」

「えええ!マジアルか?私もそれにする!あと酢こんぶとカルパスと、んまい棒も!」

「パチパチだけじゃねェのかよ。いーけど」

「ムフフ」

 

沖田は20歳、神楽は16歳になり、見た目こそただの美男美女になってしまっているが、寺子屋に行っている子供たちのような会話をしながら、駄菓子屋までの道程を歩く。

 

煽って来たり憎たらしい事を言ってくる時のお互いは非常に腹立たしいが、そうでもない時はただの友人のように接するようになった。

基本気ままな末っ子気質の二人なので元々馬は合う。

 

口に出したことはないが、そんな空気も悪くないと互いに思っていた。

 

 * * *

 

「いつもありがとうね。これ良かったらかぶき町の商店街のくじ引き。タバコ屋の横でね、今やってるのよ」

 

駄菓子屋の店主であるおばあさんはそう言って、一色刷りの紙幣ほどの大きさの紙を3枚、お釣りと一緒に沖田の掌に載せた。


 

公園から商店街までは、同じ町内もあって近い。

どっちが2回引くか言い合ったり、どのような順番で回すかジャンケンしたりしているとあっという間だ。ほどなくタバコ屋の横に、いつもは無い白いテントが見えた。

 

5人ほど並んでいる列の最後尾に立つ。

 

「あ!まだ1等の牛肉が残ってるネ!オマエ絶対当てろヨ!」

「俺ァ、くじ運は普通だからなァ。つぅか俺4等の目元マッサージ器が欲しい」

「オマエ……大事なアイデンVSティティを失ってしまうアルカ」

「いや、せめて&にしとけよ。スマホし過ぎて目が疲れてるんでィ。普通に欲しい」

 

「スマホばっか見てねぇで仕事しろ!」

「……いてっ!」

 

ゴンッと音がした方を見れば、沖田の横に土方が立っていた。

「ゲッ!土方!」

頭を押さえた沖田が心底嫌そうな顔を向ければ、土方の米神に分かりやすく青筋が立つ。

「今も仕事中だろうが!なに呑気にくじの列に並んでやがんだ!」

「トシ!あのネ、駄菓子屋のおばちゃんが福引券をくれたアル!」

土方に福引券を見せれば「ああ」と言って隊服のポケットから同じものを出した。

「そういや、さっき煙草買ったら貰ったな。これもやるよ」

そう言って神楽に差し出すも、受け取らずに白い指先は福引所に掲げられている商品の一覧を指した。

「えー!トシもすればいいアル!見てみろヨ、アレ」

導かれるようにそちらを見て、土方は目を見開く。

 

「一緒にしようヨ!5等はご当地マヨネーズアル!」

「それならしょうがねェ。いいか、お前ら5等を狙えよ」

「てめぇも仕事しろィ」

沖田は分かりやすく邪魔者を見るような目で土方を睨んだ。

 

(券を渡してとっとと帰れ、土方ァ)

(お前と違ってチャイナ娘目当てじゃねぇ。マヨネーズが欲しくて居るだけだ)

 

「神楽ちゃんじゃないか。お待たせしたね」

「オマエら何やってるアルか?」

沖田と土方が無言の会話をしていると声をかけられる。順番が来たようだ。

 

「チャイナ、壊すなよ」

「分かってるアル!牛肉出ますよーに!」

 

ガラガラガラ……コロッ

 

「白ね。残念、ティッシュどうぞ」

「えーー!もう1回!」

 

ガラガラガラ……コロッ

 

「んーーーあ、紫。おめでとう!8等、んまい棒だね」

「あーあ、んまい棒かぁ。さっきのと味違いだけど……」

ガックリと分かりやすく肩を落とした神楽は、ティッシュとんまい棒を駄菓子屋で貰った袋に入れた。チェッと口を尖らせていると、沖田がガラガラと回しだす。

 

ガラガラガラ……コロッ

 

「おめでとうございます~5等ご当地マヨネーズです~」

 

「ゲッ!」

 

ベルをチリンチリンと鳴らされるも、沖田の何とも言えない表情に神楽は吹き出した。

「ギャハハハ!!本当に取ったアル!良かったネ!トシ!」

「総悟!よくやった!寄越せ!」

「……嫌だね。これァ、アンタの目の前で爆散させてやらァ」

「やめろ!勿体ない!」

 

ぎゃあぎゃあと箱に入ったマヨネーズを奪い合う男達に、福引所の人が慌てて声を掛けた。

 

「後ろが!後ろがつかえてますから!あと1回お早めに回して下さい!」

「あ、ああ悪ぃ」

そう言われた土方は慌てて取っ手を回す。

 

ガラガラガラ……コロッ

 

「あ!出ました!おめでとうございます!!2等ペア温泉旅行宿泊券です~」

先ほどよりも盛大にベルが鳴らされ、周りからは羨望の声が上がる。そして祝儀袋が土方に渡された。

商品一覧の2等の欄にバツがつけられる。ご当地マヨネーズはまだあるらしい。

 

「土方さん、それ誰と行くんですかィ。もしかして近藤さん?それとも旦那と……?」

「誰が野郎と二人で行くか!……総悟、そのマヨネーズと交換しねぇか?」

「はぁ?」

先ほど当たった、んまい棒をモシャモシャと食べている神楽を横目に、土方は沖田の耳元に顔を寄せた。

「お前が欲しかったのはこの2等だろう?有休と合わせて調節してやる。悪い話じゃないだろ?」

祝儀袋で沖田の胸元を叩く。沖田はチッと舌打ちをしてから、マヨネーズの入った袋を押し付けて、祝儀袋を引っ掴んだ。

 

「交渉成立だな。勤務の調整をしねぇと」

 

クックッと笑って去って行く土方に、つこうとした悪態を飲み込んだ。

 

「あれ?マヨは?」

「これと交換した」

「ん?宿泊券と?旅行かー、いいなー最近行ってないアル。銀ちゃん連れてってくれないんだモン」

 

沖田は祝儀袋を握る手に少し力を込めた。神楽はそんな沖田に気付きもせずに踵を返すが「チャイナ」と呼ばれて振り返る。

すると目の前に白と赤と金色が突きつけられた。

「うわっ!」

 

「だったら俺が連れてってやろーか?一泊二食つき、質素だが静かな宿で、豪華食事つきの」



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