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あっさりと了承をした神楽に、自分で提案したものの驚きのあまり確認してしまった。

それでも分かっていると返事をした神楽の言葉に、期待するなという方が無理だろう。暴走しないために藁人形用に刺してあった土方の写真と、もしもの為の男のエチケットを着替えと一緒に風呂敷で包んだ。いやいやまさかとは思うが無いとも言い切れない。どちらもある意味お守り代わりだ。

 

だってずっと神楽に懸想している。それでなければわざわざ旅行になんぞ誘わない。土方にはバレバレらしいが、多分神楽はそんな想いなど知らないだろう。

 

そうだ、と土方を思い出す。憎たらしい上司は浮かれそうになる心のいいストッパーだ。

今日出てくるときも、

「羽目を外すなよ」

と、含みを持たせた言い方をしてきて、心底腹が立った。出発直前に、塀の外から土方の部屋目掛けてバズーカーを放ってやったのだ。

 

そして迎えた当日。

 

出発からノンストップで車を走らせ、二時間半ほどで海沿いの宿に到着した。

チェックインまでは時間があるからと、車と荷物を宿に預けて近くの温泉街に歩いて向かう。平日だからか渋滞に巻き込まれることもなく、スムーズについたので昼食をとるのに丁度良い時間だ。

宿は所謂温泉宿が密集する内の一つで、中心部は小京都のように風情がある街並みとなっていた。

 

小さいながらも昼食を取ったり食べ歩きをしていると、あっという間にチェックインの時間となった。フロントで宿泊券を出して名簿に記帳する。

同行者の欄に、神楽の名前を書く。初めて文字で書くそれに、少しだけ意識してしまったのは秘密だ。夕食の時間と朝食の時間が記されたカードと館内図、部屋の鍵を2本渡された。各自で荷物を持って部屋まで行くシステムらしい。

 

真選組の慰安旅行でもよく利用するような、ホテルというには小さく、民宿というには大きい、よくある規模の温泉旅館だった。だから沖田は完全に思い込んでいた。

 

「布団じゃねェのかィ……」

 

部屋の前に着き、旅館にありがちな重めの扉を開けると、改装をしたばかりなのか真新しい室内が見えた。壁紙やエアコンも新しく、畳も真新しい琉球畳だ。そしてその畳の上にはロータイプのダブルベッドが存在感たっぷりに置いてあった。

 

「わぁい!ベッドアル!」

 

タタッと部屋に入っていった神楽は、鞄を床に置くとベッドにダイブした。

 

いや、これダブルベットじゃねェか。言葉に出来ずに飲み込む。突っ込まれたらどう答えたらいいか分からない。神楽は嫌じゃないのだろうか。一緒に寝るという事実に気付いていない可能性もある。

とりあえず状況整理をしなければ。

「温泉入りに行こうぜ」と掛けた声は少し掠れてしまっていた。

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